はじめに|注意書き
本記事は、発達障害を否定したり、診断の意義を軽視するものではありません。
先天的な発達特性があり、適切な支援を必要とする子どもがいることを前提としています。
近年、発達障害とよく似た困りごとを示す子どもの中に、 養育環境や慢性的なストレスの影響が重なっている可能性について、 医師の話や研究で示されている知見をもとに整理します。
すべての子どもに当てはまる話ではありませんが、 一つの視点として読んでいただけたら幸いです。
第1章|「発達障害と似た症状が増えている」という現場感
小児発達を専門とする医師から、
近年、先天的な発達障害とは異なる背景を持ちながら、 発達障害と非常によく似た症状を示す子どもが増えている
という話を聞きました。
その背景として、回避したくても回避できない環境に身を置き続けた結果、 脳が身を守るための回路を優先して形成してしまうケースがある、という指摘でした。
教育や福祉の現場でも、衝動性や強い回避反応、感情調整の難しさなど、 複数の特徴が組み合わさって見られる子どもが増えているという声があります。
- 衝動的な行動や攻撃性が強い
- 注意が持続しにくい
- 感情のコントロールが難しい
- 謝罪や振り返りができず、強く反発する
- 人との距離感や境界線がつかみにくい
これらはASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動症)と重なる部分が多く、 外から見ると区別がつきにくいことも少なくありません。
また、相談・受診希望の増加により支援資源が逼迫し、 本来早期支援が重要な子どもへの対応が遅れてしまう、という課題も浮かび上がっています。

第2章|トキシック・ストレスと脳への影響
近年、小児医療や発達心理学の分野で注目されている概念に、
トキシック・ストレス(有害なストレス)
があります。
トキシック・ストレスとは、一時的な緊張や失敗体験ではなく、 長期間続き、逃げ場がなく、安心できる大人の支えが乏しい状態が重なったストレス状態を指します。
Harvard Center on the Developing Child👉 Toxic Stress: What is toxic stress?(ハーバード大による解説)ハーバード大学の発達研究センターによる公式解説
家庭内不和、ネグレクト、過度な叱責、いじめなどが慢性的に続くと、 子どもの体は常に
「危険に備えるモード」に入りやすくなります。
この状態が続くと、ストレス反応が過剰になりやすく、 不安や恐怖に関わる反応が強まる一方で、 感情のブレーキや判断に関わる機能が働きにくくなることが指摘されています。
その結果として現れやすいのが、 衝動的な行動、強い回避反応、攻撃性や易怒性、注意の散漫さ、 感情のコントロールの難しさといった特徴です。
重要なのは、これらが「本人がわざと起こしている行動」ではなく、 身を守るために学習された反応として固定化している可能性がある点です。
- 長期間続くストレスが「危険に備えるモード」を固定化させる
- 身を守る反応が安全な場面でも解除されにくくなる
- 衝動性や回避反応として表に出ることがある
危険な環境に適応するために形成された回路が、 安全な場面でも解除されずに働き続けてしまう、というイメージです。
第3章|ACEs研究が示す「環境」と「発達」の関係
トキシック・ストレスの考え方と深く関係するものとして、
ACEs(逆境的小児期体験)研究があります。
ACEsは、子ども時代に経験する逆境体験(家庭内の強い対立、ネグレクト、暴言、いじめ、親の精神的不調など)を扱い、 それらの体験の重なりが、子ども時代だけでなく思春期以降や成人後の心身の安定にも影響しうることを示してきました。
- 家庭内の強い対立
- ネグレクトや情緒的な放置
- 親の精神的不調
- 暴言や継続的ないじめ
ここで大切なのは、ACEs研究は特定の診断名を決めるためのものではなく、 環境要因が発達や健康に長期的な影響を与えることを、統計的に明らかにしている点です。
発達障害か環境要因か、という二択ではなく、 どのような環境で、どのようなストレスが長期化してきたかという視点を重ねて考える必要があります。
国立衛生研究所(NIH)PMC – ACEsと健康アウトカム👉 The Impact of Adverse Childhood Experiences on Health and Outcomes(PMCID: PMC8882933)ACEsとして定義される幼少期の逆境体験が、成人期・青年期の健康やメンタル面に関連する可能性が示されています。
ACEsと子どもの不安・うつの関係(別研究)👉 Association of ACEs with Anxiety and Depression(PMC8741560)複数の逆境体験が、青少年の不安やうつ傾向とも関連するという研究です。
厚労科研による概説(PDF)👉 逆境的小児期体験が子どものこころの健康に及ぼす影響(厚労科研)日本での研究助成の一環でまとめられた資料で、ACEsの定義や、虐待・ネグレクトなどがどのように子どもに影響しうるかが示されています。
第4章|思春期前後までの関わりが鍵と言われる理由
脳は成人後も変化し続けますが、 感情の調整やストレスへの反応、回避や防衛のパターンといった「生き方の土台となる回路」は、 幼少期から思春期前後にかけて特に強く形成されると考えられています。
- 幼少期から思春期前後は回路が強く形成されやすい
- 安心できる関係性が「安全の前提」を育てる
- 慢性的な緊張は警戒の前提を強めやすい
この時期に、安心できる大人がいる、否定されない、生活の見通しが立つ、 失敗しても関係が壊れない、といった経験が積み重なることで、 脳は「世界は基本的に安全である」という前提を学習します。
一方で、慢性的な不安や緊張の中で育った場合、 脳は「常に警戒しなければならない」という前提で回路を組み立てやすくなります。 この違いは、学力や能力よりも前に、感情の安定性や衝動のコントロール、対人関係に影響して現れることがあります。
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第5章|適切な関わりで改善が見られるケースもある
希望がある点も、きちんと触れておきたいと思います。 後天的なストレスの影響が大きい場合、環境が調整されることで、 子どもの行動や反応が和らいでいくケースも報告されています。
安心できる大人との継続的な関わり、過度な叱責や否定を避けた関係性、 生活リズムやルールの整理、本人のペースを尊重した関わりなどの積み重ねによって、 過剰だった防衛反応が弱まり、感情や行動のコントロールがしやすくなることがあります。
これは「しつけ」や「気合」で変わるという話ではなく、 脳が「もう過剰に身を守らなくても大丈夫だ」と学び直すプロセスが進む、という捉え方です。 すべてのケースで同じような変化が起きるわけではありませんが、 環境への介入が意味を持つ可能性があるという点は、重要な視点だと感じています。
- 安心できる大人との継続的な関わり
- 否定を減らし、生活の見通しを整える
- 小さな成功体験を積み重ねる

補足章|子育て・学校生活の中で感じてきたこと
私は小児発達障害の専門家ではありません。メンタル系医療従事者ではありますが、対象は成人で、小児発達障害については 医療や支援の現場で直接支援に関わっている立場でもありません。
一方で、保護者として子育てをする中で、また学校生活の中で起きている困りごとを見聞きし、 実際に関わる立場として、いくつもの違和感を感じてきました。
それは特定の一つの出来事ではなく、いくつかの特徴が重なって現れているケースでした。 衝動的な行動や強い怒りの爆発、注意や指摘を受けた際に謝罪ができず強く反発する、 時間や距離といった境界線がつかみにくい、家庭内で大人の関与が薄いことをうかがわせる発言などです。
多くの子どもに社会的な困り感が表れているように感じられる一方で、 家庭でその困りごとを受け止め、周囲と調整しようとする大人の関わりが見えにくい状況に、 戸惑いを覚えたこともあります。
もちろん、すべてのケースが同じ背景を持つわけではありません。 先天的な特性を持つ子どももいます。 家庭の事情は外からは見えないことも多く、安易に判断できるものではないと理解しています。
それでも、これらの行動を単に「性格」や「問題行動」として片づけることに、私は違和感を覚えました。 そして冒頭で触れた医師の話を聞いたとき、点として見えていた体験が、一本の線としてつながったように感じたのです。
- 小児発達障害の専門家ではなく、保護者として子育てと学校生活に関わってきた
- 複数の特徴が重なって現れる子どもの姿に、違和感を覚えてきた
- 子ども側の問題として片づけることに限界を感じていた
- 小児発達を専門とする医師の話を聞き、体験が一本の線としてつながった
まとめ|子どもの問題ではなく、環境の問題として考える
子どもの行動を「性格」や「問題行動」として切り取ってしまうと、背景にある要因は見えにくくなります。 発達障害か、環境の問題か、という二択ではなく、 環境によって脳がどのように適応してきたのか、その過程を見る視点が必要なのではないでしょうか。
早い段階で気づき、子どもだけでなく家庭全体を支える仕組みがあれば、 困りごとが深刻化する前に、より楽な形で支援につながれる可能性があります。
これは誰かを責めるための記事ではありません。 今起きている現実を理解し、次につなげるために、私なりに言葉にしてみたものです。
- 子どもの行動を単純な性格や問題行動として切り取らない
- 発達障害か環境要因かという二択にしない
- 環境への適応として脳の反応を見る視点を持つ
- 早期に気づき、家庭も含めた支援につなげる
子育てや学校生活の中で感じてきた違和感を、医師の言葉や研究と重ねながら、私なりに整理してみました。
子どもの脳は、環境の影響を強く受けます。それは同時に、環境が変われば回復の余地があるということでもあります。
この視点が、どこかで誰かの心を少し軽くし、次の一歩につながるきっかけになれば幸いです。
❀moyu❀

